TON「UAEゴールデンビザ」騒動まとめ
概要
2025年7月、TON(The Open Network)財団が「TONを3年間10万ドルステーキング+3.5万ドル手数料でUAE(アラブ首長国連邦)ゴールデンビザ(10年滞在許可)を取得できる」と発表し、暗号資産業界で大きな話題となりました。しかし直後に財団が「UAE政府との正式な合意や承認は一切ない」と訂正声明を出し、期待と失望が交錯する展開となりました。
経緯と訂正の詳細
- 初報の内容
- TONを3年間10万ドルステーキング+3.5万ドル手数料で、UAEの10年ゴールデンビザ取得を謳う
- 家族も対象、迅速な審査などの特典をアピール
- TON財団公式ページでも案内、トークン価格が急騰
- 訂正発表(7月7日)
- TON財団が「UAE政府との公式提携・承認はなし」と明言
- プログラムは実験的な構想段階であり、政府関与や認可は一切ない
- UAE当局(入国管理庁・証券商品庁・仮想資産規制庁)も共同声明で否定
なぜ大きな問題となったのか
- Web3と公共政策の融合への期待
- 分散型ステーキングで政府の永住権が得られるという「世界初」の事例になる可能性があった
- 暗号資産の実社会応用への期待が高まった
- 規制領域での過剰な先走りリスク
- 移民・国益に関わる制度は厳格な法規制下にあり、誤情報は重大な混乱や信用失墜を招く
- UAE当局は「イノベーションは歓迎するが、法令順守が大前提」と強調
TON財団・UAE・暗号資産業界への影響
- TON財団
- 初動の話題化で注目を集めた一方、訂正による「過剰な期待煽り」や「規制軽視」との批判も
- 迅速な訂正と規制順守姿勢の表明は一定の評価
- UAE
- 仮想通貨フレンドリーな国として知られるが、透明性・法令順守・ガバナンスにも厳格
- 今回の迅速な否定声明は「規制とイノベーションの両立」を示すもの
- 投資家・ユーザー
- デジタル資産でリアルな移住権を得たいという需要は根強いが、現時点で公式制度は存在しない
- 早まった資金移動や申請をしたユーザーは混乱・損失リスクも
今後の展望と教訓
- Web3×リアル社会の橋渡しは「法令順守・透明性・段階的実装」が必須
- TON財団は今後、規制当局と連携し公式な枠組みを模索する意向
- 「トークンで移住」のような革新的構想も、現実化には時間と慎重な設計が不可欠
- 市場の過度な期待・価格変動リスク、誤情報拡散リスクへの注意喚起
まとめ
TONの「UAEゴールデンビザ」構想は、現時点で政府承認も公式制度も一切存在しません。
ただし、ブロックチェーン技術によるリアル社会への応用・制度設計の可能性は今後も模索されていくでしょう。
イノベーション推進と規制順守のバランス、そして正確な情報発信の重要性が改めて浮き彫りになった一件です。
参考記事:米フォーブス