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日本の承認文化がWeb3スタートアップと資金流出の元凶
■ 結論(要点サマリー)
- 日本の暗号資産産業からスタートアップや流動性が流出している主因は、税制ではなく「遅くリスク回避的な承認文化」──WeFi CEOマクシム・サカロフ氏が強調。
- たとえ「暗号資産の20%一律課税」が実現しても、FSA/JVCEAの承認プロセスの根本的改革なしには現状は変わらないとの指摘。
■ 日本の現状と課題
● 承認プロセスの“遅さ”と起業家流出
- トークン上場やIEOを行う際、まず自主規制団体(JVCEA)による審査、次に金融庁(FSA)の最終承認という2段階の審査が必要。
- 届出やホワイトペーパー審査、製品変更申請などはたびたび差し戻しや修正対応を要される。
- このプロセスには6~12ヶ月以上かかることも多く、資金繰りが圧迫され、日本発プロジェクトでも「まず海外上場を目指す」例が増加。
● 形式的なリスク回避の文化
- 審査過程は失敗の“回避”や責任逃れが優先され、革新的な実験や迅速な意思決定を抑制。
- サカロフ氏は「プロジェクトを1年かけて作っても、最後に“上場できません”“リリース不可”と突き返されるリスクが常にある」と言及。
■「税制」よりも「文化」
- 進行中の**20%一律課税案(暗号資産の金融商品化)**についても、「文化が変わらなければインパクトは限定的」と指摘。
- 「文化は減税をも無効化する(Culture eats tax cuts for breakfast)」との辛辣なコメント。
■ 海外との比較・“アジア格差”
● アジア他国の事例
- シンガポール:厳格さは残るが明確な審査ルールが存在、承認スピードが早い。
- UAE(ドバイ等):グローバルで平均的に最速レベル、積極的な規制サンドボックス。
- 韓国:外部事前承認よりも「取引所自身の継続的な運営義務(VAUPA)」中心で、上場審査が速い。
- 香港:革新的な規制サンドボックス「Ensemble Sandbox」導入。規制の範囲内で大胆な実証実験を即時始動。
■ サカロフ氏の提案・改善策
- 期間を区切ったリスクベース承認(time-boxed, risk-based approvals)
- 「ステーキング」「ガバナンス」にも対応した実効的なサンドボックスの整備
- 情報開示義務の柔軟化やプロポーショナル化
■ 今後の展望・市場インパクト
- 承認慣行・規制文化の転換がなければ、日本発Web3プロジェクトや開発人材は当面“海外流出”が続く見込み。
- 一方、アジアにおけるトークン化・Web3実装の波は加速、投資マネーと人材は規制が“実験・成長を許す”地域に集まりつつある。
◆ まとめ
- 日本の“遅い・リスク回避的”承認文化こそが最大の障壁。税制改革だけでは根本は変わらない。
- 真のイノベーションには迅速な審査、規制サンドボックス、柔軟な情報開示──「文化の刷新」が不可欠。
- 急速なアジア勢との差が今後さらに顕著に。国内産業活性化には制度・慣行の抜本見直しが急務。
参考記事