
トランプ大統領、再び物議を醸す「暗号資産恩赦」を検討
Samourai Wallet CEOへの大統領恩赦の可能性に言及
2025年12月、ドナルド・トランプ米大統領が、暗号資産業界で大きな議論を呼んでいる事件について恩赦(パードン)を検討する可能性に言及した。
対象となっているのは、ビットコインのプライバシー重視ウォレット「Samourai Wallet」CEOのケオン・ロドリゲス(Keonne Rodriguez)氏である。
トランプ氏の発言内容
12月15日の記者会見で、記者から次のような質問が投げかけられた。
「暗号資産のプライバシーソフトを作った男性が、連邦刑務所に送られようとしています。この事件はバイデン政権下で始まりましたが、あなたの司法省が有罪判決を確保しました。暗号資産コミュニティでは、彼は恩赦されるべきだという声が多く上がっています」
これに対し、トランプ大統領は次のように回答した。
「聞いたことはある。見てみよう。なぜ彼は恩赦されるべきだと思う?」
さらに記者が「多くの暗号資産関係者が恩赦を求めている」と補足すると、
「それなら検討する。正直、詳しくは知らないが、見てみる」
と述べ、完全否定はせず“検討対象にする”姿勢を示した。
Samourai Wallet事件の概要
DOJ(米司法省)の主張
2025年11月19日、ニューヨーク南部地区連邦検察は次の内容を発表した。
- Samourai Walletの
- CEO:ケオン・ロドリゲス
- CTO:ウィリアム・ロナガン・ヒル
- 2人は「無登録の送金業」かつ「マネーロンダリング共謀」で有罪
問題とされたサービス
- ビットコインミキシングサービス 「Whirlpool」
- 取引難読化ツール 「Ricochet」
これらは、
- 麻薬取引
- ダークネット市場
- ハッキング・詐欺
- 制裁対象国
- 殺し屋依頼
- 児童ポルノ関連サイト
などに関連する犯罪資金約2億3,700万ドル(約350億円)以上の流れを隠蔽する目的で使われたとされている。
裁判で明らかになった内部認識
司法省によると、裁判資料の中でロドリゲス氏は内部メッセージにおいて、
「ミキシングとは、ビットコインのためのマネーロンダリングだ」
と表現していたとされる。
また、
- ダークネット利用者向けに積極的に宣伝
- 2020年にはハッカーに「盗んだ暗号資産をWhirlpoolに流せ」と促した
- 他のミキサーを使われた際に「失望した」とやり取りしていた
といった点も悪質性の根拠とされた。
判決内容
- ロドリゲス(37歳):懲役5年
- ヒル:懲役4年
- 罰金:各25万ドル
- 不正利益没収:計637万ドル
検察は、
「技術の種類や法定通貨か暗号資産かを問わず、犯罪収益の洗浄は重大犯罪である」
と強調している。
トランプ政権の「暗号資産関連恩赦」の流れ
2025年、トランプ大統領は大規模な恩赦政策を実行してきた。
主な恩赦例
- 1月6日議事堂事件関係者 約1,500人
- 元Binance CEO:チャンポン・ジャオ(CZ)
- Silk Road創設者:ロス・ウルブリヒト
- BitMEX共同創業者たち
- その他、政治家・実業家・元警察幹部など
これにより、
「暗号資産×法執行」に対するトランプ流アプローチが一貫しているとの見方も出ている。
まとめ|このニュースが意味するもの
- 技術としての「プライバシー保護」と
- 犯罪を助長する「意図的な難読化」の境界線
- そして政治判断による司法介入
この3点が、今後の暗号資産規制を左右するテーマになりつつある。
注目ポイント
- Samourai事件は「プライバシー技術そのもの」が裁かれた初の象徴例
- 恩赦が出れば、
- ミキサー・匿名化技術の扱い
- 開発者責任の範囲
に大きな影響を与える可能性
- 出なければ、プライバシー系Web3開発の萎縮も懸念される











