2025年8月7日、暗号資産ミキサー「Tornado Cash」をめぐる米連邦裁判で、新たな判決が下されました。この事件は、暗号資産の“プライバシー”と“違法行為の温床”という2つの側面が鋭く対立した象徴的な事例となっています。
以下は、記事「Tornado Cash sold crypto “privacy”; the US saw “money laundering.”」の日本語まとめ記事です:

Tornado Cash裁判:プライバシー保護か、マネーロンダリングか──米国司法が見た暗号ミキサーの本質
■ Tornado Cashとは?
- Ethereumブロックチェーン上で稼働していた暗号資産の「ミキサー」サービス。
- ユーザーの暗号資産を一時的にプールして混ぜることで、出金先ウォレットの匿名性を確保。
- 入金単位を0.1, 1, 10, 100 ETHに限定し、取引の特定を困難にする工夫あり。
- ガス代を匿名で支払う「リレイヤー」機構やスマートコントラクトを活用し、非中央集権的・非管理型で動作。
■ 米国政府の見解:これは「マネーロンダリング」
- 米司法省は、Tornado Cashが「KYC(顧客確認)」や「AML(マネーロンダリング防止)」規制を無視していたと主張。
- 北朝鮮のハッカー集団「ラザルス・グループ」が数億ドルを洗浄するなど、国家安全保障にも関わる深刻な事例が発覚。
- 総額10億ドル以上の違法資金がTornado経由で洗浄された疑い。
- 2023年、共同創設者ローマン・ストーム氏が逮捕される(他の2名は米国外に在住)。
■ 弁護側の主張:コードを書いただけ、責任はない
- ストーム被告は、「我々は単にシステムを作っただけで、利用方法には関与していない」と主張。
- 実際に、「北朝鮮のやつらが検出されて良かった」とするチャット履歴なども証拠として提出。
- 被害に遭った暗号取引所に対しても、可能な限りブロックチェーン分析ツールを提供するなどの協力を試みたという。
- Tornado Cashは、あくまで「非管理型」サービスで、資金を一切預からない技術的構造だと説明。
■ 判決結果:一部有罪も、主要罪では陪審が意見割れる
- 陪審員は、主要容疑である「マネーロンダリング」および「対北朝鮮制裁違反」では結論が出せず。
→ 今後、再審が行われるかは検察が判断。 - 一方で、「無許可送金事業の運営」については有罪と判断。
→ 現在、ストーム被告は保釈中(200万ドル)で、今後の判決を待つ。
■ 暗号ミキサーに対する圧力は続く
- 別のミキサー「Samourai Wallet」の開発者も2024年に逮捕され、有罪を認めた。
- 米政府は匿名性と金融犯罪の温床になり得るサービスへの規制を強化中。
🔍 まとめ
Tornado Cash事件は、暗号資産における「プライバシー保護」と「犯罪防止」のジレンマを如実に示しています。
被告側は“ツールを提供しただけ”と主張し、政府は“それが犯罪に利用されていたことを知りながら放置した”と反論。
今後の判決や再審の行方は、暗号業界全体の方向性にも大きな影響を与える可能性があります。