
ウォレットはWeb3の「新しい玄関口」になる
― 業界リーダーが語る、2026年に向けたシンプルで身近なWeb3の姿
2025年のIndia Blockchain Weekで開催されたパネル
「How Wallets Will Shape Consumer Onboarding in 2026」 は、
Web3の未来像を非常に明確に示した。
結論はシンプルだ。
ウォレットはもはや資産保管ツールではなく、
Web3体験そのものの“入口”になっている。
Web3は「ウォレットから始まる」
パネルをモデレートした
Entrepreneur India & APAC 編集長のSachin Marya氏は、
次のように述べている。
「私は個人的に、ウォレットこそがWeb3のメインゲートだと思っている。
すべてはそこから始まる。」
この発言が象徴するように、
多くのユーザーにとってWeb3は
・dApps
・DeFi
・NFT
・ゲーム
より先に、まずウォレット体験から始まる。
ウォレットの役割は「保管」から「体験」へ
かつてウォレットは、
秘密鍵を管理し、資産を保管するための技術者向けツールだった。
しかし2026年に向けて、
ウォレットは次の役割を担い始めている。
- Web3へのログイン
- 支払い・送金
- DeFi・NFT・ゲームへの接続
- 収益(Earn)と決済(Pay)の統合
- 日常的な金融インターフェース
つまり、
ウォレット=Web3のUI(ユーザーインターフェース)
という位置づけだ。
シンプルさがすべてを決める
Bitget WalletのCMO、Jamie Ek氏は、
ユーザーの期待が大きく変わったことを強調する。
「2026年に向けて、
重要なのは“Earn”と“Pay”。
そして、とにかくシンプルであること。」
彼が言及した「UEX」は、
DeFiの仕組みを、
中央集権取引所のような分かりやすい体験に包み込む試み だ。
これは、
「分散型か、中央集権か」という対立ではなく、
ユーザー体験を最優先する設計思想 を示している。
Web3最大の未解決問題は「デザイン」
Trust WalletのCOO、Rik Krieger氏は、
技術進化にもかかわらず、
ユーザー中心設計がまだ不十分 だと指摘する。
「ユーザー中心設計という言葉は25年前からある。
それでもWeb3では、まだ理想的とは言えない。」
Trust Walletが重視しているのは、
国や地域ごとの利用実態だ。
- どのタイミングで使われるのか
- 日常生活の中でどう使われるのか
- 何が“面倒”と感じられるのか
ローカル理解がなければ、グローバル普及はない
という現実的な視点が示されている。
信頼とセキュリティは妥協できない
特にインド市場では、
UX以上に「信頼」が重視される傾向があるという。
Krieger氏は、
スキャム対策について次のように語る。
「警告を出しても、人はクリックしてしまう。
自由が大きいほど、利用者の責任も大きくなる。」
完全な防止は不可能だが、
検知・警告・教育 を重ねることで
被害を減らす努力が続けられている。
グローバル展開の現実的な課題
ウォレットの急成長には、
理想論だけでは越えられない課題もある。
- 各国規制への対応
- 利用者保護とのバランス
- 限られたリソース
Krieger氏は、
「銀行と同じことを、より自由な形でやっているだけ」
と述べ、
Web3を単なる投機と誤解する見方に異を唱えた。
ハイブリッドモデルはすでに始まっている
Ek氏は、
「中央集権 vs 分散型」という議論そのものが
時代遅れになりつつあると示唆する。
「DeFiへのアクセスを、
中央集権的な体験で包み込む。
それが今、実際に起きていることだ。」
この考え方は、
今のMetaMaskや主要ウォレットの進化とも完全に一致する。
ウォレット業界は競争より“共存”へ
興味深いのは、
ウォレット同士を競合ではなく、
市場拡大の仲間 と捉えている点だ。
「Trust Walletを使ってもいいし、Bitget Walletでもいい。
市場全体が成長すれば、皆が勝つ。」
これは、
Web3が「奪い合い」から「参加型経済」へ
移行していることを象徴している。
まとめ:2026年、Web3はウォレットから始まる
このパネルが示した未来は明確だ。
- ウォレットはWeb3の玄関口になる
- 難しさは排除され、体験が前面に出る
- DeFi・決済・収益は1つのUIに統合される
- 信頼とセキュリティは最優先事項
- Web3は“誰でも使えるもの”へ近づいている
Web3が本当に広がるかどうかは、
ウォレット体験がどれだけ人間中心になるか
にかかっている。











